Projects

地域にある根深い社会課題を解決していくため、企業をパートナーと位置付け、ともに「私たちは今、何を問われているのか」を探索し、新しい価値を生み出すことに取り組んでいます。日本におけるリビングラボは、地域とっての実りが少ない実証実験、一時的なワークショップの開催にとどまることが多くありました。それを乗り越えるため、私たちは地域関係者との協働的で実践的なプロジェクトを組成し、日常的に生活者と関わっている福祉関係者の参加を得て進めてきました。また、リビングラボが生み出す資金を行政予算が配分されづらい「狭間の問題」に取り組むための原資として活用することを常に志向しています。

わくわく人生サロン

高齢者分野全般 介護予防 社会参加 居住・コミュニティ

「IoTによる疾病の早期検知サービスの実証実験に参加希望者が集まらない」という企業の課題から出発したプロジェクトです。企業の担当者と地域で日常的に住民と向き合っているソーシャルワーカー等との対話を設定し、「疾病予測」という一見ユーザーにとって「よいこと」が、実は、知った後に安心して暮らせる状況がない場合には、知ること自体が痛み (不安・恐れ) になることを明らかにしていきました。そこで得た「知ることのデザイン」という新たな課題設定に対し、行政、地域、そして企業が協働し、「自分を知る」ことの価値を探索する「わくわく人生サロン」を企画、実施しました。そこで得た新たな気づきをさらに有識者等との対話で深め、サービスコンセプト・UX・UIについての文章 (基本要件書) としてまとめ、具体的なサービス企画に生かせるようにしました。
地域にとっては、これまでの集団的なサロンでは居心地がよくなかった人たちに対して、「一人ひとり」に注目する新たな機会としての価値を発揮し、「自分を知る」対話を通じて参加者の意欲が湧き上がってくることは介護予防やコミュニティ政策に対して大きな示唆を生み出しました。

VRを活用した地域とつながるプロジェクト

社会参加 居住・コミュニティ 交通・移動

東京大学先端科学技術研究センターの登嶋健太さんが介護施設で働くなかで感じた課題から発案した 「VR 旅行」をベースとし、大牟田市内で大牟田市 (行政) や福祉施設と連携してプロジェクトを展開しています。介護施設に入居する外出が難しい方々に見覚えある場所のVR映像を見てもらうと、自然と体や心が動き出します。地元の景色を撮影してVR映像にするのは、アクティブシニアや若者のチームです。このプロセスを通して、地域のことをいつもより深く考える機会にもなっています。私たちは、管理や効率化のためだけに新しいテクノロジーを導入するのではなく、Well-beingの実現に寄与したり、人の可能性を引き出すようなテクノロジーのあり方、活用の可能性、導入の仕方を考えていきたいと思っています。

健やかに生きることについての思考枠組みリフレーミング

高齢者分野全般 介護予防

NTTデータ社は、ヘルスケア領域において、ソリューションありきではなく、利用者の目線とこれからの社会のありかたが統合するようなビジョンの策定を必要としていました。そこで大牟田リビングラボは、ヘルスケアをめぐるシステム (制度) が起こしているエラー (社会課題) を地域のリアルな文脈において共有し、システム転換の可能性を具体的に示すことなどを通じ、新たなビジョンを一緒に検討しました。そして、そのビジョンを実現する新規事業を検討するため、これまでのヘルスケアの枠組みからは溢れ落ちるリアルな生活者像 (ユーザー像) 、生活のシーン等をまとめ、関心ある社員や関連するプロジェクトに取り組んでいる社員の方々を参加者とするワークショップを共同して企画・開催しました。

にんげんフェスティバル 2022 - IdentitieS 〜わたしの行方

高齢者分野全般 介護予防 社会参加 居住・コミュニティ 交通・移動 教育 就労 障がい

ポニポニと地域創生Coデザイン研究所は、2022年12月2日(金)・3日(土)・4日(日)の3日間、人や社会の未来を大牟田で体感できるイベント「にんげんフェスティバル2022」を初開催しました。今年は「IdentitieS (アイデンティティーズ) ~わたしの行方」をテーマに、有識者・実践者との対話企画、テクノロジー体験、フードマーケットを実施し、全国から多くの方にご参加いただきました。また、当日は社会人・学生・クリエイターなど多様なバックグラウンドを持つ人たちが一同に会しフェスティバルを運営しました。普段はそれぞれのテーマに向き合い、取り組んでいる人たち同士の新たなつながりも生まれ、ここからまた何かが生まれそうな予感のする3日間となりました。

未来の教室

高齢者分野全般 介護予防 テクノロジー発想の展開 社会参加 居住・コミュニティ 交通・移動 教育 就労 障がい

2018年度、経済産業省の事業である「未来の教室」に参画し、企業の新規事業開発・サービス開発担当者向けに、大牟田リビングラボを舞台として参加者がマインドセットを転換し、自ら持ち込んだ企画をリフレームする1社あたり6日間のプログラムを実施しました。そこでは、企業からの参加者、ソーシャルワーカー等の地域の実践者、リビングラボのコーディネーターがフラットなチームメンバーとなり、役割や思い込みから自由になることや、人の奥にあるニーズを考えるプロセスを重視し、丁寧に設計しました。参加者からは、「自分たちだけでは、ここ (ブラッシュアップされた企画) まで絶対に行きつけなかった」「本人にとって本当に必要なサービスを目指しながらも、簡単にサービス提供者側の都合が入り込んでしまうことに、気づかされた」「この 2 時間 (ケース検討) でさえ、自分たちの初期仮説のどこに問題があるかクリアになった。通常のやり方だと、仮説の問題点に気づくまで、もっとコストをかけることになっただろう」などのフィードバックを得ることができました。

人文学的検討・大牟田市営住宅での調査を通じた Well-being な地域づくりのあり方に関する研究

社会参加 居住・コミュニティ

Well-being な地域社会の実現を研究するNTT研究所を企業パートナー、有明工業高等専門学校を地域のパートナーとし、大牟田市 (行政) とも連携する共同研究を実施しました。具体的には、豊かな増改築とつながりを有する大牟田市営歴木住宅 (築 50 年以上) においてフィールド調査を実施し、住みこなしの変遷・背景を探り、住民個人のライフヒストリーから住まいや地域などの場所への愛着やアイデンティティの在りようを見出していきました。また、建て替えにともなう住み替えを控える住民のみなさんと一緒に、デジタルファブリケーションを活用した家具のリメイク、住み替え後の住戸を再現したモデルルームでの住みこなし体験 (物理的・身体的AR) などに取り組みました。それらを踏まえ、スマートシティ・スマートホームをめぐる言説の整理や人文学的な検討を行い、Well-being な地域社会の実現に資する新たな示唆としてまとめました。

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