About
大牟田リビングラボ
大牟田リビングラボができる以前、後に立ち上げに関わることになるメンバーは、それぞれ異なる領域において「人が中心となり、一人ひとりの可能性が発揮される社会の実現に向けて何ができるだろうか」と考え、取り組んでいました。そのなかで、大牟田で展開していた「人間中心」「社会モデル」を核とする先進的な高齢者ケアの考えに触れ、共感し、それをアップデートし、社会全体に拡張していく目標において合流し、チームを形作りました。目標実現のためには、セクターや領域を乗り越え、自治体や地域内外の事業者と協働する「地域経営の主体」が必要という認識を共有し、2019年に大牟田未来共創センター(通称:ポニポニ)を立ち上げました。
ポニポニは、大牟田市 (行政) と協働して政策を形成・運用するのみならず、地域で暮らす人たちの身近な相談窓口であり、介護予防の拠点でもある地域包括支援センターを運営し、住まいや移動のプロジェクトを行政、地域の事業者、地域コミュニティとともに進めています。それらにより、生活や地域の状況、社会システムと現実との間で起きる課題 (社会課題) をリアルに捉え続けてきました。そして、得た知見を深めるために有識者との対話を重ねています。そんなポニポニが地域を問わずあらゆるパートナーとの協働を行うために運営しているのが大牟田リビングラボです。
大牟田リビングラボは、大牟田という地域や大牟田で暮らす住民にとっての価値を重視しています。一方で私たちは、拠点を置く大牟田のことだけを考えているわけではありません。大牟田という地域に日本あるいは現代において共通する構造や社会課題を見出し、「地域がどのように変われば、世界がよりよいものになっていくのか」を考え、変革につなげることを意識しています。
その意味において大牟田リビングラボは、大牟田市で見出された社会課題や暮らしのリアリティに関心をもち、問題を再生産するシステムをともに問い直し、テクノロジーの活用余地や可能性を一緒に考えるパートナーを求めています。大牟田で深掘りされた事柄は、さまざまな領域で活躍する企業、あらゆる地域の自治体、世界中のリビングラボと共有し、活用してもらうことによって、よりよい世界をたぐりよせることにつなげられると考えています。大牟田を拠点にしながらも、広く世界に開かれたリビングラボとして成長していきたいと考えています。
原口悠
一般社団法人大牟田未来共創センター 代表理事
NPO法人ドットファイブトーキョー 代表理事
企業向けの企画・提案、市民活動、国の検討会の事務局、自治体の計画策定など、セクターや領域を超えた取り組みを経験し、社会システムの縮図としての地域で取り組む重要性、縦割りを乗り越える主体の必要性を痛感する。さまざまな主体や個人と協働し、社会課題を生み出し続ける既存の社会システムを「人の可能性を引き出す」ものへと転換していくことを目指している。
木村篤信
株式会社地域創生Coデザイン研究所 ポリフォニックパートナー
一般社団法人日本リビングラボネットワーク (JNoLL:ジェノール) 代表理事
デザインイノベーションコンソーシアム フェロー
一般社団法人大牟田未来共創センター
東京理科大学客員 准教授
大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学を修了後、NTT研究所に入社。博士 (工学) 。主としてHCI、CSCW、UXデザイン、リビングラボの研究開発に従事。デザイン研究のチームを牽引し、企業内のUXデザインプロジェクト、地域の社会課題に関するリビングラボプロジェクトを多数実践し、コンサルティングや教育活動を行っている。現在は、各地の地域主体ともに、まちづくり、地域経営、サービス開発などの文脈で新しいソーシャルデザインのあり方を探求中。著書に「2030年の情報通信技術 生活者の未来像」 (NTT出版|2015年) 等。
山内泰
一般社団法人大牟田未来共創センター 理事
NPO法人ドネルモ 代表理事
株式会社ふくしごと 取締役
東京大学先端科学技術研究センター 特任研究員
芸術工学博士。地域を拠点に、近代的な社会システムの原理的に捉えなおす普遍的な問いを立ち上げながら、地域内の諸課題にコミットすると同時に、地域外とフェアな関係を築ける自律的な地域主体のあり方を探る。
梅本政隆
株式会社地域創生Coデザイン研究所
一般社団法人大牟田未来共創センター
九州厚生局地域包括ケアシステムアドバイザー
大学卒業後、高齢者の介護や相談支援、地域福祉の取組みに12年間たずさわる。その後、行政職員として保健福祉や住宅、企画などの分野からまちづくりにたずさわる。千葉県出身。26歳のときに福岡県大牟田市に移住。社会福祉士。修士 (社会福祉学) 。
松浦克太
株式会社地域創生Coデザイン研究所 ポリフォニックパートナー
一般社団法人大牟田未来共創センター
NTT西日本にて主に新規事業開発に従事。ベンチャー企業との共同事業創出をめざすオープンイノベーションプログラムの企画・運営、子ども向けプログラミング教育事業の立ち上げ・展開などを主導。「地域と企業との共創」の難しさと可能性を探索するため、2019年から大牟田のプロジェクトに参画。
大牟田市との最初の取り組み
自治体、地域住民、企業が連携したイノベーション創出をめざす「地域密着型リビングラボ」共同実験
福岡県大牟田市とNTT西日本、NTTは、自治体・地域住民・企業のサービス共創の仕組み「地域密着型リビングラボ」の共同実験を、2018年2月26日 (月) より実施しました。ポニポニは法人化前であったため協定には名を連ねず、コーディネーターとして関わりました。
従来のサービス創出では、サービス企画の主体である企業の仮説に基づき、消費者としての地域住民へインタビュー等を行う「企業提案型モデル」が一般的ですが、企業側の考えが基本となり、住民も問われたことに限定して発言する等、本質的な課題解決に至りにくいという課題がありました。そこで、地域密着型リビングラボでは、地域住民をサービス利用者ではなく、一緒にサービスを共創するパートナーとして捉え、地域住民の生活 (リビング) の中で本質的な課題の探索や発見、解決策の検討や検証 (ラボ) を行ないました。
本共同実験では、地域密着型リビングラボの実現に必要な仕組みを3者が持ち寄り、具体的な社会課題解決の検討をとおしてサービス共創の仕組みの検証を行った結果、ソーシャルワーカー等との連携と課題探索・設定できる組織が地域に常に存在している体制づくりが不可欠であり、地域側の主体として社会課題解決やサービス開発に深く関わる組織の必要性が示唆されました。